fc2ブログ
blogram投票ボタン

FC2投票


ついった


ブログラム

 

訪問者数

累計
+53000Hit

最近の記事


最近のコメント


最近のトラックバック


カレンダー

02 | 2024/03 | 04
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

月別アーカイブ


カテゴリー


DATE: CATEGORY:特別編なのは様シリーズ(R-18)
 こんばんは、すいもうです。
 さて、本日は、パパンとのお話後半ですね。
 どういうことになったかは追記にて。
 では、お黄泉ください。


 なのはさま!~決意を胸に~

「ザフィーラが言うには、フェイトちゃんは泣いていたそうだ」
「え?」
「おまえの抱えるものを知ってあの子は泣いていたそうだ」
 お父さんの言葉は、信じられなかった。
 私の抱えるものを知って泣いてくれた人はいなかった。みな、驚いた顔をする。それから、ふたつに分かれる。気持ち悪がるか、侮蔑するかのどちらかだった。アリシアさんはそうじゃなかったし、アインス先生もそうだ。だけど、それを知っても特に気にも留めなかったのは、ザフィーラさんだけだった。
 でも、フェイトちゃんの反応はその三人それぞれとも違うものだった。泣いてくれた。私の抱えるものを知って、フェイトちゃんは泣いてくれた。たったそれだけのことだったが、それだけのことがすごく嬉しかった。
「ザフィーラはこうも言っていた。泣きながら、あの子は自分のことを責めていたようだ、と。悲しみと同じくらいの後悔が瞳にはあった。自分のしてしまったこと。それを深く悔いている瞳だった、とな」
「フェイト、ちゃん」
「本当にいい子だな、フェイトちゃんは」
 お父さんは、どこか嬉しそうに笑っている。そんなお父さんに当たり前だよ、と言うと、お父さんはそうか、とだけ言った。やっぱり、嬉しそうだった。だけど、どこか寂しそうにも見える。どうしてなのかは、よくわからなかった。
 ただ、そうなると、どうしてフェイトちゃんが私を拒絶したのか。その理由がわからなくなってくる。私の抱えるものを知ったからじゃない。じゃあ、なんで私を拒絶したのだろうか。
「フェイトちゃんがおまえを振った理由。お父さんには、なんとなくだけど、わかるなぁ」
「え?」
「フェイトちゃんが泣いたことを考えると、なんとなくだけどな」
「なんで?」
「たぶん、フェイトちゃんは、自分では荷が重いと思ったのかもしれない。いや、おまえを支え切れるのか、と思ってしまったのだろうな。いわば、自信がなかったんだと思う」
「自信がなかった」
 ああ、とお父さんが頷いた。言われてみれば、たしかに、私の抱えるものを知って、支え切れると自信を持って言える人はそうはいないだろう。特に、フェイトちゃんは知ったばかりだ。そんな自信をたやすく抱けるわけがなかった。そう考えると、私を拒絶した理由は、納得できる気がした。でも、納得したところで、フェイトちゃんをお嫁さんにすることはもうできない。その事実を覆すことはできない。
「なにを落ち込んでいるんだ、おまえは?」
 お父さんが呆れたように言った。私のことを理解してくれたことは嬉しい。だけど、それでも拒絶されてしまったことは変らない。だからこその落ち込みだというのに、どうもお父さんはその辺りの配慮が足りないな、と思うほかなかった。すると、お父さんが小さく溜め息を吐いた。
「なのは。おまえは、フェイトちゃんに嫌いだと言われたのか?」
「え?」
「どうなんだ? フェイトちゃんから、はっきりと嫌いだと言われたのか?」
「だって、振るってことは、そういうことで」
「じゃあ、なんでフェイトちゃんは泣いたんだ? おまえのことを少なからず想っているからだろう?」
「それは」
 たしかにそうだった。私のことを少なからず想ってくれているからこそ、フェイトちゃんは泣いてくれたんだ。そう言えば、フェイトちゃんから嫌いとは言われていない。付き合うことはできない。お嫁さんにはなれない、とそう言われただけだった。ひと言たりとも嫌いとは言われていなかった。
「やれやれ、ようやく気づいたようだな。おまえは、振られたことを気にしすぎだ。嫌いと言われていないうえに、おまえの秘密を知って泣いてくれた。そのうえでおまえを振ったということは、いまの自分では、おまえを支えることができない、と考えたってことだ。さっきも言ったが、フェイトちゃんは、いまの自分では、おまえを支える自信がなかったんだよ」
「いまの自分ってことは」
「そうだ。将来の彼女であれば、支えることができるようになれる、ということなのかもしれない」
「かもしれないって」
 いままで散々得意げに言ってきたのに、いきなり弱気になってしまっている。矛盾とまではいかないけど、言っていることがちょっとおかしい気がした。
「仕方ないだろう? お父さんは、フェイトちゃんじゃない。彼女の気持ちは彼女にしかわからない。違うか?」
「それは、そうだけど」
「とにかく、フェイトちゃんの気持ちはわからないが、少なくとも、おまえを嫌って、おまえを振ったわけじゃない。おまえの秘密を知って涙を流してくれたあの子は、きっとおまえを好きでいてくれている。さて、そこで質問だ。おまえはどうしたいんだ、なのは」
 じっとお父さんが私を見つめてくる。どうしたいのか。そう言われても、思いつくものはこれと言ってなかった。嫌われているわけじゃないというのはわかったけど、だからと言って、そう前向きになることもできそうになかった。それでも、お父さんはじっと私を見つめている。私がやりたいこと。いや、為さなければならないこと。それがなんなのか、ひとつだけ思い浮かんでいた。いや、それはずっと私が心に抱いてきたことで、いわば、大前提だった。
「フェイトちゃんを、守りたい」
「どうしてだ?」
「好きだからだよ。そして、フェイトちゃんの過去を知って、いままで以上にそう思えるようになった。私は彼女を守る。その心をなによりも守ってあげたい」
 フェイトちゃんは、「お父さん」のことをいまも引きずっている。誰に触れられたくない、と思っている。その証拠がアリシアさんへの暴言だった。普段の彼女ではありえない反応だった。それだけフェイトちゃんにとって、深い傷ということだろう。
 いままで私はフェイトちゃんを守りたい、と思っていた。その守るが彼女の身を守ることだけだったというのは、いまはっきりとわかる。でも、いまは違う。身を守るだけじゃない。私は彼女の心を守ってあげたい。いや、守るだけじゃない。私はフェイトちゃんの心を。
「フェイトちゃんの心を救ってあげたい」
「そうか。わかった。おまえの覚悟はよくわかったよ」
 お父さんはそれだけ言うと、椅子から立ち上がった。
「お父さん?」
「日曜日」
「え?」
「日曜日の夜だな。道場に来い。鍛えてやる」
「鍛えるって」
「俺にできるのは、それくらいだ。おまえが口にした言葉を、決意にできるように鍛えてやること。それが俺にできることだろうさ」
「お父さん」
「ただ、ひとつだけ忠告しておくぞ? なのは」
 お父さんは、すっと笑みを消した。同時に、なにかが肌を打った。背筋が凍る。ぞくり、と体が震えた。
「生半可な気持ちだと、無事では済まんぞ?」
「生半可な気持ちなんかじゃない」
「そうか。わかった。今日はこのまま家にいろ。あとのことは任せておけ」
「え、でも」
「たまには、親に甘えろ、なのは」
 お父さんが笑った。その言葉に頷くと、お父さんは無言で部屋を出て行ってしまった。すぐに玄関を出るおとが聞えて来た。同時に、私は背中からベッドに倒れ込んだ。
「現役から離れてずいぶんと経ったって話だったけど」
 いまだに腕は衰えていない。それは肌を打ったもので明らかだった。
「来週から大変になりそうだなぁ」
 だけど、願ってもないことだった。私はぱんと頬を叩いてから、ベッドから起きあがった。窓の外には、夜空にかかった月が見えた。きれいな月だった。
「頑張るよ、フェイトちゃん」
 一度は絶望に染まった身。でも、いまは希望に満ち溢れているというわけじゃないけど、さっきとは、絶望だけに染まっていた時とはなにか違う気がした。
「頑張ろう」
 誰かに言うわけでもなく、私は自分自身に向けてそう呟いた……。
スポンサーサイト



テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)



copyright © 流るる、雲。 all rights reserved.Powered by FC2ブログ