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DATE: CATEGORY: 第五章:宿命の闘い
 おはようございます、すいもうです。
 さて、本日から、タイトルのわかる内容となります。
 どういうことなのかは追記にて。
 では、お黄泉ください。


 第五章:宿命の闘い 第百五話「伍戦~悲しみの鉄騎~その一」

 ──それは、宿命だった。逃れられない終焉の闘い。信じられないとしか言えない。だって、こんなことありえるわけがない。だけど、それでも、目の前の光景が現実だってことだけはわかる。覆すことはできない。なら、あたしは……。

 紅い。目の前が紅かった。
 紅いなにかが、熱いなにかが頬に付着した。独特の臭いに、鼻を抑えそうになる。だが、手は動かなかった。動かすことができなかった。
「お師匠」
 ぽつりと呟いた。地面に手をつきながら、呟く。目の前に師はいる。たしかに、そこに師はいた。荒い呼吸を繰り返しながら、自分を見つめている。額には、珠のような汗が浮かび上がっている。それでも、なんでもないように師は自分を見つめている。
「どうした? ちび助。なに呆けているんだよ」
 にやり、と師は笑う。師のいつも笑い方。だが、いつもとはまるで違う。違いすぎるほどに違っている。その姿にヴィータはなんて言えばいいのか、わからなくなってしまっていた。
「お師匠、どうして」
「なに言っているのか、わかんねぇぞ、おまえ」
 おかしそうに師は笑う。そんな姿を見ていると、なんともないのか、と思えてしまう。
 だが、違う。師は汗を流し続けている。たしかに、それくらいには動いたとは思う。闘ったとは思う。
 しかし、師の汗は闘いを行ったから掻くものとはまるで違っている。闘いのための汗ではない。汗は汗でも、脂汗のはずだ。それでも、師は表情を変えない。口元に笑みを張りつかせたままだった。
「どうして、どうして」
「どうしてばかりじゃ、答えようがねえなぁ」
「なんで、なんで」
「今度はなんでか。まったくおまえは、本当に変らねえなぁ。変に大人びたところもあるくせに、中身はガキたったもんな、おまえ」
「だって、だって」
「あー、わかった。わかった。一回落ちつけ、な?」
 そう言って、師は頭を撫でてくれた。昔はよくこうしてくれた。ごつごつとした手の感触は昔とほとんど変わらない。だが、昔とは多少異なっていた。それもそのはずだ。師は左手で頭を撫でてくれている。昔は右手で撫でてくれていた。それがいまできないのは、理由を聞くまでもなくヴィータは痛いほど理解していた。
「なんで、あたしを」
「さぁな。条件反射かなぁ」
 おかしそうに師は笑った。だが、それでも汗を掻き続けている。脂汗を掻いているのに、師はまだ笑い続けている。どうして、笑えるんだ。どうして、助けてくれたんだ。ヴィータにはわからなかった。
「バカだ。お師匠はバカだ」
「ああ、そうだな。ほんの少し。そうほんの少しだけ小狡く生きることができていれば、俺は俺の望むものを手にいれられたかもしれない。だが、できなかった。それは俺がバカだったから。バカ正直に生きることしか知らなかったからだ。だから、バカって言われても否定できない。ちょっとむかつくことだけどな」
 師は笑いながら言った。その笑みにヴィータは視界が歪むのがわかった。
「ったく、泣くなよ、これくらいで」
 そう言って、師は左手で目元を拭ってくれた。師の指がわずかに目に入ったが、仕方のないことだった。
「本当に、おまえは面倒だよ、ヴィータ」
 昔に何度か言われた言葉だった。言われた時は傷ついた。だが、傷ついた分だけ、見返してやるって思った。そうして実際に見返すことができた時、師はいつも褒めて、傷つけて悪かったと言ってくれた。
 厳しすぎるくらいに厳しい人だったが、それでいて優しさもあった。ただ、あまりにも不器用すぎる優しさだった。そういうところも自分は師に似てしまったのかもしれない。そして、その優しさがいまはただ胸に痛い。嬉しいとは思わない。ただ、胸がひどく痛くて堪らなかった。
「お師匠、ごめん、あたしが」
「謝るなよ。おまえは謝るようなことはしてねえだろう? なら、謝らなくていい。堂々としていろよ。そっちの方がおまえらしい」
 たしかに、そうかもしれない、と思ったが、ふんぞり返るような態度がいまできるはずがなかった。ただ、自分を責める気持ちでいっぱいだった。それ以外のことをする余裕が、心にはなかった。
「さぁて、とりあえず、再開と行こうぜ、ヴィータ」
 そう言って、師は立ち上がると、左手でスパーダを取り、構えた。いつもとは逆の構えだった。
 だが、それでも肌を打つ感覚は変らない。しかし、それが虚勢としか思えなかった。それがまた悲しかった。
「お師匠」
「来いよ。あの頃みたいに遮二無二突っ込んで来い」
「でも、お師匠は腕が」
「腕の一本が使えなくなるくらい、どうってことはねえだろう。こんなもん、ちょうどいいハンデだ」
 そう言って師は笑う。いつもなら、ここで空いている方の手で手招きをしているだろうが、いまそれをすることはできない。できるはずがなかった。
「使えないんじゃねえ。ないじゃないか。肘から先がなくなっているじゃないか」
 ヴィータは叫びながら、師を見つめた。師の右腕は肘から先がなくなっていた。先をなくした肘からは血が滴っている。それでも、師は笑っている。耐えられるはずのない痛みを耐え、呻き声ひとつさえ漏らすことなく、師は笑っている。
「だから、それがどうした。ほら、早く来い。時間もったいねえだろう」
 なにを言っても無駄だと思った。闘え、と師は言っている。一度言いだしたら、聞くような人じゃなかった。なら、残された手段はひとつしかなかった。
「どうなっても知らねえからな」
 それだけ言って、ヴィータはグラーフアイゼンを握り締めて、師へと向かって駈けた。駈けながら、現状に至るまでのことを思い出していた……。

                    つづく

 はい、以上です。さて、ヴィータ編のはじまりですが、最初からクライマックス? って思える内容ですが、あえてやってみました。ただ、いつもの書き方だと書きづらいんですが、それでもやってみようかなって思います。まぁ、とにかくです。次回もヴィータ視点です。それでは、今日はこの辺で。では、また。
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テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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