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DATE: CATEGORY: 第四章:出会いと別れ
 こんばんは、すいもうです。
 さて、本日は、アレ~? って内容です。
 どういうことなのかは追記にて。
 では、お黄泉ください。


 第四章:出会いと別れ 第六十四話「準備~終る時~」

 ──それは偶然。本来あるはずのなかった出会い。訪れてほしくない時というのは、必ずあるものだった。だが、どんなに訪れてほしくなくても、訪れるのが常である。だから、これも仕方のないことだった。そして、それが終焉のはじまりの合図だった……。

「アンヌ先生」
 聞き覚えのある声だった。忘れることがない声でもある。アンヌはまぶたを開いた。
「ここは」
 見たことのない場所だった。遠くに見える美しい山並み。まるで、自分が咲くはずの季節を無視したかのように咲き誇る色とりどりの花々。そして、いままで見たことがないくらいに、蒼く澄んだ空。それが目の前には拡がっていた。
「どういうことだろうな、これは」
 なのはに挨拶をした後、そのまま部屋に帰り、ひとりで眠ったはずだった。決して外には出ていないはずなのだ。なのに、どうして自分は外にいるのだろうか。それもこんな見ず知らずの場所に。アンヌはちょっと困惑した。
「理由は、話してもらえるのだろうな」
 アンヌは辺りを見回しながら、言った。人の姿は見えない。だが、確かにいるはずだった。それも、いま最も会いたい人物がここにはいる。アンヌはそう確信していた。
「そろそろ出てこい。昔から、おまえは隠れるのが得意だった。だが、いつもどこか詰めの甘いところがあった。だから、かくれんぼでは、最後まで見つからなかったことは一度もなかった。必ず途中で見つかっていたものだ。だが、今回ばかりは見つけられん。だから、そろそろ出てこないか、クレア」
 数百年も前に目の前で命を落とした愛娘の名を口にした。すると、くすりという笑い声が後ろから聞こえてきた。アンヌはゆっくりと振り返った。
「お久しぶりですね、アンヌ先生」
 にこやかな笑顔を浮かべて、クレアがそこに立っていた。あの頃のままの姿だった。
「ああ、久しいな。クレア」
「はい。ほんとうにお久しぶりですね」
 嬉しそうに笑うクレア。似ているだけの赤の他人ではないことが、その笑顔を見てはっきりとした。この笑顔はクレアにしか浮かべられないものだ。いまそれができるのは、フェイトだけだろう。
「どうやって私の前に姿を現せたかは知らんが、元気そうでなによりだ」
「あいかわらずですね、先生は。あの頃と同じ、そっけないままです」
「これでも驚いているぞ? おまえはすでに生まれ変わっている。その生まれ変わった存在と私はすでに知りあっているのだからね。そのおまえとこうして会っている。どうだ? 驚くのも当然であろう?」
「そうですね。たしかに「私」はもう生まれ変わっている。でも、それは私じゃない」
「どういうことだ?」
「簡単なことですよ。「私」は確かにもう死んでいます。でも、私はまだ生きている」
「おまえは、クレアではないのか?」
「クレアですよ。先生の知っている、クレア・グラディウス・カッヴァリーノ本人です。ただ、先生の知らない、クレアでもあります」
「私の知らない?」
「はい。簡単に言えば、半身とでも言えばいいのかな。ふたつに分かれた心。それが私です。どうして私がふたつに分かれたのかは」
「ガザニアに殺された時、か?」
「はい。でも、あれは仕方のないことです。ああしなければあの人は陛下を殺していた」
「そうだな。もっとも、あの男の場合は、因果応報とでも言うべきものだが」
 みずからの野心のために、命をもてあそんだ。その償いは、死ですら生ぬるいものだった。
「そうかもしれません。ですが、命が消えるのをこれ以上私は見ていたくなかった」
「だろうな。おまえはそういう子だった」
「その結果、「私」は死にました。そして、私が生まれた」
「どうしてそうなったんだ?」
「秘密です」
「おいおい、ここまで語っておいて、それはないだろう?」
「いま話しちゃったら面白くないじゃないですか」
「面白くないっておまえなあ」
「言ったでしょう? アンヌ先生。私はアンヌ先生の知らないクレアだって。私は先生の知っている「クレア」よりもずっといじわるです。もっと言えば、小悪魔さんなんです」
 にやり、とクレアが笑う。意地の悪い笑顔だった。だが、それでもどこかかわいらしさがあった。確かに、小悪魔というのは言い得て妙なのかもしれない。
「でもね、先生」
「うん?」
「小悪魔な私にも夢があるんですよ?」
「ほう、夢か。それは聞かせてもらえるのかな?」
「ええ。これは聞いてほしいことですから」
「よかろう、聞こう」
「ありがとうございます」
 そう言って、クレアは踵を返し、アンヌに背中を向けて歩きはじめた。アンヌもその後を追って行く。
「もし、生まれ変わることがあったら、私ある人の娘になりたいんです」
「ある人?」
「先生も知っている人です。そして、あの人が。ガザニアが犠牲にしようとしている人」
 誰のことを言っているのか、その一言でわかった。アンヌはなにも言わず、黙ってクレアの話を聞いた。
「もし、「彼女」の娘として生まれたなら、私は本当のクレアになれる。「もう一人のクレア」じゃなく、私自身が本当のクレアになれる」
「それが理由か?」
「ええ。半分はですけど」
「半分?」
「もう半分は、面白そうだから」
「おいおい」
「ごめんなさい。でも、本当なんです。「彼女」の娘として生を受けることができたら、すごく楽しいだろうなって。権力や、虚しいだけの立場なんかない、普通の女の子として生きていける。そう思えるんです」
「そうか」
 権力も、立場も両方ともクレアの人生における大きな重荷だった。そんなものとは無縁に生きていきたい。クレアがそう願うのも仕方のないことだった。
「本当なら、アンヌ先生の本当の娘として生まれてきたいって言うべきなんでしょうけどね」
「いいさ。私も、おまえやガザニアたちのようなトラブルメーカーの親を来世もしていたくない」
「あははは、アンヌ先生は本当にそっけないままですね」
「事実だからな。だが、だからこそ、言いたいことがある」
「なんですか?」
「おまえの夢、叶うといいな」
「はい。そうですね」
 クレアが嬉しそうに笑う。自分の知らないクレアだったとしても、目の前にいるのは、愛娘であるクレアに代りないのだ。だからこそ、娘の願いが叶うことを願うのはある意味当然のことだった。
「そろそろ時間ですね」
「もう、そんな時間なのか?」
「ええ」
 クレアが立ち止まり言った。確かに、意識が徐々に遠のきはじめている。
「アンヌ先生」
「うん?」
「最後にひとつだけお願いがあります」
「なんだ?」
「カトレアたちのことを。娘たちのことをよろしくお願いします」
「ああ。わかった。できる限りのことはしよう」
「ありがとうございます、先生。ううん。お母さん」
 最後の最後でそう来るか。アンヌは苦笑いを浮かべながら、クレアを見つめた。もう意識を保つことはできそうにない。それでもアンヌは言った。
「来世でも幸せになりなさい、私のかわいい娘」
 クレアが返事をした。だが、なんて言ったかは聞えなかった。ただ、笑顔を浮かべてくれていることだけはわかった。アンヌは笑顔を見つめたまま、意識を手放した。
「アンヌさん。起きてください」
 また声が聞こえてきた。最近になって知り合いになったばかりの声だった。アンヌはまぶたを開いた。すると、目の前には、ちょっと焦った表情を浮かべているシャーリーの姿があった。
「シャリオ・フィニーノか。どうした?」
「どうしたじゃなく、そろそろ訓練時間ですよ?」
「なに? もうそんな時間なのか?」
「はい」
 時計を見ると、確かにもうじき訓練が始まる時間だった。大寝坊だな。アンヌは苦笑いを浮かべる。
「すまないな。手間をかけた」
「いえ、気にしないでください」
 そう言って、にこやかに笑うシャーリー。愛想笑いではなく、本当に笑っているのがよくわかる。これはこれで才能だな、とアンヌは思った。
「それで?」
「え?」
「それ以外にも用事があるのだろう?」
「あ。はい。実は例の頼まれごとが終りました」
「もう、終ったのか?」
「思ったよりも時間かかっちゃいましたけど、いつでも、実装可能です」
「そうか。わかった。では、八神はやてに伝えてくれ」
「なにをですか?」
「これからひとりずつ一日の休みをいれてほしい、と。その間にデバイスのメンテナンスをする、とな」
「メンテナンスだけでいいんですか?」
「ああ。言うのはそれでいい」
「でも」
「それにいま言ったところで、実際に使いようがない。なら、言う必要はあるまい」
「それはそうですけど」
「それよりもだ。一日で実装することはできるのか?」
「はい。それは大丈夫です。念のために助っ人の申請もしてありますから」
「助っ人?」
「はい。かなりの腕ききですから、アンヌさんもびっくりしますよ」
「そうか。では、両方ともおまえさんに頼んだ」
「はい、任されました」
 胸を叩くシャーリー。そういうことをする輩は信用できないと相場は決まっているのだが、シャーリーの場合は、その相場からは外れている。
「では、私は準備をするから」
「わかりました。では、はやてさんに連絡しに行っています」
「ああ、頼んだぞ」
「はい。では、また」
 そう言ってシャーリーは部屋を出て行った。嵐が通り過ぎたような静けさが部屋の中に漂っている。アンヌはぽつりと呟いた。
「はじまりだな」
 なんのはじまりなのか、自分に問いかける必要はなかった。アンヌはもう一度同じ言葉を呟いた……。

                   つづく

 はい、以上です。さて、宣言通り、次回からあのお方です。誰のことなのかは次回にて。さて、今回はちょっとアレ~? って内容でしたけど、まぁ、第五章終ったらたぶんわかります。それでは、今夜はこの辺で。では、また。
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テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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